2020.06.10
元気が出る1分コラム

無形資産 “ヒト” を再評価するとき

日本を元気にする!運動会屋遠藤のつぶやき Vol.29


米大手IT企業の「GAFA」にマイクロソフトを加えた5社「GAFAM」の株式時価総額の合計が、東証1部上場企業(2170社)のそれを、このコロナ禍を機に一気に上回りました。バランスシートを見ると、時価総額が5社の中で最も大きいマイクロソフト(世界2位)の有形資産は約3.9兆円で日本企業で最も時価総額の大きいトヨタ自動車(世界40位)のおよそ4割になっているそうです。無形資産の考え方の違いもありますが、それでもトヨタの7.7倍に時価総額を拡大できたのは、無形資産を活用して企業価値を高めていると言えます。この流れは今後も加速していく可能性が高いと思います。

この無形資産について『無形資産が経済を支配する』(ジョナサン・ハスケル教授ら著)では、以下の3つに分けています。

  • ソフトウエアやデータなどの「コンピューター化情報」
  • 研究開発などの「イノベーション財産」
  • 研修や市場調査などの「経済能力」

この3つの中で、日本企業の投資が特に低いとされているのが、生産性向上につながる「経済能力」への投資と言われています。こうした状態が続くと、人材教育が滞り、新技術を使える人材が増えにくく、社会の変化に対するスピードも鈍化してしまいます。その結果、労働の質や生産性も上がらず、イノベーションも起きにくくなるというスパイラルに陥る可能性があります。

この状況を変えていくために必要なことの一つに、経営者及びリーダーの“目に見えないものの再評価”があると思います。
日本では、労働時間を「仕事量」と見なし、一定基準以上については残業代を支払うという働き方が中心となっていました。その結果なのかもしれませんが、(公財)日本生産本部(2018年)によると、日本の就業者が1時間に生み出す付加価値は、46.8ドルと米国の6割程度の水準で、1970年代以降先進7か国で最下位が続いています。

とある経営者はテレワークを導入したところ、工夫して新規取引先を次々と獲得した社員が現れ、社員の自主性や突破力が無形の資産だと気づいたということを話していました。そしてこれまで長時間働き、指示されたことを忠実にこなす社員を評価してきた仕組みを見直すそうです。

社会の変化に対応し続け、社会に存続できる組織であるためには、目に見えない「ヒトの価値」を再評価し、社員が主体的に業務に取り組んでいく組織の仕組みを作っていくことが大切だと思います。
これが、これからのV字回復のカギかもしれません!

この記事を書いた人
遠藤 直哉

ファシリテーター

遠藤 直哉

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